精進料理が漫画になることで一般的なものに
久住さんが原案協力をされた『サチのお寺ごはん』は全13巻をもって2023年に完結し、2017年にはドラマ化もされた作品。漫画はかねもりあやみさん、監修は「料理僧」として知られる青江覚峰(あおえかくほう)さんが担当されています。
前田: 「料理僧」として有名な青江覚峰さんとの出会いはどんなものだったんですか?
久住: 出版社の人に紹介してもらったんですよ。それで(精進)料理を食べさせてもらって、これは面白いなと思って。それでかねもりさんと僕と青江さんと編集者の4人で会って、いろんなアイデアを出していって。僕がしたのは「設定とかこんな風になっていたら面白いんじゃないの」みたいなのを言ったところまでですね。
前田: 久住さんにとっても精進料理というところは、やっぱり新しい出会いでしたか?
久住: そうですね。ちょっとお坊さんたちも無理して食べているんじゃないかなとか思ったりしたんだけど、青江さんっていうのはすごく柔軟な考えを持っていて、食べ物に対してもすごく柔軟に大きく考えられる人だったから、精進料理っていうものに対する(僕の)考え方も変わりましたね。青江さんのセンスが良かったんだと思いますね。いい人と出会えたなと思います。
前田: 最初に出てきた「なすの利休汁」とかすごいおいしそうで、メニューとレシピが書いてあるんですよね。「作ってみたい!」って思いました。
久住: そうそう、本当においしいんですよ。食べさせてもらったんですけど、もうだまされましたね見事に。錦糸卵とか、卵を全然使ってないものだったりとかして。「それも卵は使ってないんですよ」とか言われたりして。もしかするとGREEN KEWPIEの(HOBOTAMA)を使ったのかもしれないですね(笑)。
前田: あはは。精進料理っていうのは、基本的には野菜や豆腐が中心になっていて、殺生をしないっていう考え方の下で生まれているので、そのために出汁までこだわって作られるものが多いですよね。最近では健康にいいとか、そういう考え方からも注目を集めているところがありますね。でも本当、季節ごとのお料理がおいしそうで食べてみたいって思うものばっかりです。
久住: この人(青江さん)の作る料理は、肉や魚がないからなんか物足りないなっていう風に思わせないような料理を出してくれますね。
僕も精進料理っていうものに対する考え方が変わりました
身も心も軽くなる、精進料理で夏バテ退散?
ゲストのためにGREEN KEWPIEを使った料理を食べていただく「みんなにうれしいGREEN KEWPIEレシピ」のコーナー。久住さんへの3皿目は、精進料理をテーマに、しっかり食べ応えのある「うなぎもどき」です。
前田: 『サチのお寺ごはん』と同じ、精進料理を用意しました。題して、『身も心も軽くなる、精進料理で夏バテ退散?』です。お重をご用意してありますので、開けてみてもらえたらと思います。
久住: うなぎですね、これは。うなぎを模したものは、確かに精進料理にありますね。
前田: 年を重ねるに従って野菜が好きになってきたという久住さんに、最後はしっかり食べていただきたくて「うなぎもどき」をご用意しています。
久住: 「うなぎもどき」!(笑)いいですね。うん、おいしい。こののりが(うなぎの)皮になっているんだね。
前田: そうなんです!うなぎの皮にあたる部分にはのりがあって、それがまたちょっとリアルな感じもするし、おいしくもありますよね。この「うなぎもどき」ですが、ごぼうと山芋を皮ごとすりおろしました。それに水を切った豆腐と「HOBOTAMA 加熱用液卵風」、片栗粉を加えて作られています。通常の精進料理には卵は使えないんですが、GREEN KEWPIEは動物性の原料を使っていないので、精進料理との相性もぴったりなんですね。
久住: お〜、それは素晴らしい!
前田: 甘辛いタレとのりの風味もぴったりで。すごく弾力がある感じで食べ応えがありますね。
久住: そうですね、弾力を感じますね。うん、いいなぁ。これはちょっとやってもいいですね。子どもなんかは、うなぎ最初は食べなかったりするからこれの方がいいんじゃない。
前田: 食べやすい感じがしますね。ちょっとかまぼこっぽい感じがして、すごくおいしいです。
GREEN KEWPIEは精進料理とも相性ぴったりなんです
お〜、それは素晴らしい!
前田: これに使われているのが、この「HOBOTAMA 加熱用液卵風」なんですよね。これが隠れているとは思えないお料理ですね。
久住: こういうのが隠し味になると深みが出るっていうか、 味に幅が出るんですかね。
前田: やっぱり世界でもヴィーガンだったり、プラントベースを必要としている人がすごく増えてきている中で、日本に旅しに来た方の選択肢にこういうお料理があるとすごくいいのかなと思いますね。
「おいしそう」という感覚で世界がつながるのがうれしい
「うなぎもどき」に舌鼓を打ちながら、さらに話に花を咲かせるお二人。ヴィーガンやプラントベースを求める人が多くなったというお話から、話題は『孤独のグルメ』で感じた国境や文化を超える「おいしそう」という感覚について。
久住: 『孤独のグルメ』は今海外の11か国で翻訳されているんですけど、たまたまイタリア人の知り合いがいて。日本人の彼女から『孤独のグルメ』を教えてもらって、イタリア語になっているものを読んで「すごく好きだ」って言うんですよ。で、その中に高崎の焼きまんじゅうが出てくるから、「高崎の焼きまんじゅうなんてイタリアの人がわかるのかな」って言ったら、「いや、わからない。味の想像もつかないけど、僕はこれが食べてみたい」って。それを聞いて「あ、そうか」って思って。僕の周りの人にも、外国で『孤独のグルメ』が訳されたって言うと「そんなのわかるのかな」ってみんな言うんだけど、「おいしそう」っていうことは共通なんです。そのことをハタと気づいたんだよね。僕が小学校の時にモノクロテレビで観た西部劇で、酒場みたいなとこでなんか食べているんだよね。それで母親に「あれは何食べているの?」って聞いて、すごいおいしそうに思ったの。そしたら「あれは豆の煮物じゃないかしらね〜」って。
前田: あはは、豆ですか。
久住: 「外国には豆の煮物なんかないだろう」って思ったんだけど、今考えたらチリビーンズなんだよ。
前田: あー!
久住: うん、そうなんだよ。その時、それがなんだかわかんなかったけど、食べたいって思ったわけだよね。しかもモノクロ。だから「おいしそう」っていうのは伝わるんだよね。それはもう、谷口さんの画力がそれを表していたからね。井之頭五郎が食べているものは「おいしそう」っていうことで、それは「食べてみたい」になるんですね。だから料理そのものよりも、その人間が食べておいしいって思っているそのことで伝わっていくっていう。この(みんなにうれしいGREEN KEWPIEチャンネルの)テーマに“誰かのうれしいがみんなのうれしいに”ってあるけど、「おいしそう」っていうのは伝わると思うんだよね。
前田: そこにはこう、文化を飛び越える力もあるってことですね。
久住: 僕が子どものころに西部劇を観てそれを「おいしそう」って思ったように、イタリアの人が高崎の焼きまんじゅうを「おいしそう」って思ったのだったら、それってすごく平和だなと思うんだよね。
前田: やっぱり日本の私たちからしても『孤独のグルメ』で表現しているお店だったり、食事っていうのにすごく懐かしさを感じるし、ローカリズムとして大切にこの次の世代にも残しておきたいような食事がいっぱい出てくると思うんですけど、それがさらに世界にまで広がって行っているっていうのがうれしいことですね、本当に。
久住: だって、おいしいもの食べてけんかする人いないでしょう。「うまいなこの野郎!」とかって、笑いながら怒る人みたいになっちゃう。いないと思うんだよね。だから、相手の国のおいしいものを知るってことは、すごく相手の国の文化を理解することだと思うし、それが「おいしい」っていうのでつながっていくのは非常にいいことだと思いますね。
違う国の人と「おいしい」でつながるのは非常にいいこと
そこには文化を飛び越える力もありますね
一番おいしいものは記憶の中にしかないかもしれない
独自の路線でファンを増やし続ける『孤独のグルメ』に始まり、好きな野菜をテーマに歌や絵本を作るなど、幅広いジャンルで自由な表現を続ける久住さん。そんな久住さんは、これからの人生をどう生きていかれるのでしょう。
前田: これから先、久住さんはどんな活動をしていきたいですか?
久住: そうですね。松重さんとも話していたけど、だんだん食も細くなるし、肉をガンガン食べたいとかそういうのもなくなってくると思うんですよね。でもそれはそれなりに面白い考え方ができるんじゃないかなって思いますね。こういう年齢になったらどんな風に食べるのだろうか、どんな風においしいと言うのだろうかっていうのを考えるのは面白いことですね。
前田: 年を重ねていくとおいしさの考え方も変わっていくところもあるんですかね。
久住: そうですね。わかっていくこともあるし。それは子どもがだんだん野菜を食べられるようになったりするのと同じように、そういう時もあるんじゃないかな。よく「死ぬ前に何が食べたい?」とかって言うじゃないですか。そこに向かって自分たちは今生きているわけじゃないですか。でもそこに向かってだんだんこう変わっていくんでしょうね。食べ方とか、おいしいものとか。もしかしたら今もうそうだけど、一番おいしいものっていうのは記憶の中にしかないかもしれないですよね。母親が作った料理とか、もう(母親が死んじゃっていたら)食べることできないじゃないですか。そういうおいしい記憶というのは、どんどん心の中で大きくなってくような気がしますね。一番おいしいものって、心の中に、記憶の中にしかなくて、誰とも共有できないことなのかもしれない。 だけどそれがみんなそうだったら、その思い出でつながれるかもしれないよね、また他の人と。
前田: 食べるっていう行為以外の、側にいた人だったり、作ってくれた人の顔だったり、そういった思い出がおいしいを作っていくんですね。
久住: はい、その通りだと思います。
前田: そう思うと本当に、毎回の食事ってすごく大切なものですね。より大切な人の側でおいしく食べることを続けていきたいですね。
久住: うん、できる人はもう大切にした方がいいですよ。
一番おいしいものは心の中にしかないかもしれないけど、みんながそうだったらその思い出でつながれるかもしれないよね
作ってくれた人の顔や思い出がおいしいを作っていくんですね
仏教に関わる方がたしなむ食事が漫画になることによって身近になりますね